海外在住子供の日本語教育について

海外在住の子供でも親が日本人なら日本語は話せるようになるのか、海外在住の子供の日本語教育について、海外在住(オランダ在住)の親の立場から思う所、感じる所を掲載しています。

親が日本人でも日本語力は当たり前には上がらない

まず、前提として海外在住の子供は、親が日本人だからと言って当たり前に日本語力は上がりません。もちろん自宅で日本語で会話をする場合など多少、他の子に比べれば上がりやすい環境にはありますが、必ずしも「親が日本人だから日本語が出来るようになる」という訳ではありません。

これを読んでいる方が日本語でこの文章を読めるのは、母語が日本語として学び生活していたからか、他の言語を母語とし日本語を学習したからのどちらかであって、自然に読めるようになったわけではないのです。

子供が当たり前に、この文章を読めるようになるのか、そう考えると分かり易いかもしれません。まず、文章内にある漢字を読めないといけません。単語を知らないと意味も分かりません。「海外に住んでいる」という言葉を知っていても「海外在住」という言葉は知らないかもしれません。会話では日本語を音で知っていても、文章を読む力がないと日本語を読む力ありません。

そんな風に、日本語の力は当たり前に上がるものではありません。海外に居ても親が日本人同士なら日本語は問題ない、そう考えている場合もあるかもしれませんが、私の狭い実体験が元にはなりますが、当たり前には上がるものではない、と感じています。

第一言語を何語にするか 母語の確立

子供にとっての第一言語は何語にするのか、海外在住の場合子供が小さいうちは親の判断も必要になってきます。暮らしている国の言葉か、父親の言葉か、母親の言葉かなどの第一言語の選択です。

日本で育った外国人の中に、日本語が第一言語の子供がいるように、海外在住の中には両親が日本人であっても、日本語以外が第一言語という場合はもちろんあるのです。その中で日本語を第一言語にすると判断した場合は、日本語を母語、第一言語にする育て方をしていく必要がでてきます。小さいうちから海外で子供を育てる場合、何語を母語とするのか、夫婦間やご自分の中で意識しておいた方が良い点です。

バイリンガル・トリリンガルは勝手にできるわけじゃない

第一言語を日本語にして、現地の言葉を学ぶにしろ、現地の言葉を第一言語として日本語を学ぶにしろ、忘れてはならないのは「バイリンガル」「トリリンガル」は勝手になるわけではないという事です。「海外に住んでいるなら英語も話せて、子供もバイリンガルで良いね!」など言われたこと、言ったことがある人も多いかと思いますが、勝手になんてならないです。どこかで言語の壁を感じ、話せない悔しさ聞き取れない憤りを感じ、それを乗り越えて二言語以上習得している人だと思います。

子供も同様です。もちろん、子供は大人に比べて特に小さいうちは言語の習得がしやすいです。ですが、学校では日本語以外の言語で学んでいるなかで、住んでいればその言語が勝手に話せるようになるわけではありませんし、日本語家庭なら言語が簡単に習得できるという訳ではありません。海外で生活すれば、子育てすれば「バイリンガル」「トリリンガル」になりやすい環境かもしれませんが、苦労が伴う事は忘れてはならない点です。

どうして日本語を勉強しないといけないの

英語なり、現地語の学校に通い生活していると「日本語」を使う機会そのものがありません。親が日本人同士であれば、家庭内で日本語の会話の必要性はありますが、それ以外は生活に必要でない日本語を何故学習しなければならないのか、というのは子供にとって至極当然の疑問です。その時、親が「良いからやるの!」など説明を流してしまっては、子供は学習意義を感じられませんよね。

この答えは各家庭により異なります。

  • いずれ日本に帰るから
  • 日本に遊びに行くときに使うから
  • 日本人だから
  • 祖国だから
  • 日本のお友達と遊ぶときに使うから
  • おじいちゃんおばあちゃんと話すため

などなど、色々な回答がありますが、これは家庭や子供の立場によって答えが異なるので、正解はありません。

ちなみに日本人の両親の元、海外で育っている我が子には「日本人としてのアイデンティティ」として日本語を学んでほしいという想いがあり、第一言語を日本語として育てています。ただ「あなたの第一言語は日本語として育ってほしいから」など言っても反抗期の子供が納得するわけがありません。

ゲームで「北東」へ行けって言われたけど、どこのこと?

と言われた時に、「日本のゲームを楽しむためにもっと日本語の勉強が必要だね」と子供が好きな事に日本語を学ぶ理由として話すなどしています。家庭により方針が異なりますし、子供の性格や年齢によっても回答は異なるでしょうが、家庭内の方針とその時子供が納得できる答えの用意は必要になりそうです。

教科書の無料配布

海外在住の子供たちにも、日本の教科書の無料配布の機会があります。事前に大使館に登録の必要があります。

日本の教科書は、特に国語の教科書は日本語を学習するためにほんとうによく出来ていて習う漢字が入っているお話が掲載されています。そして、 1年生⇒2年生⇒3年生と 順を追うにつれ習った漢字のみが漢字で書かれていて、徐々に難しくなるという流れになっており、改めてみるととても良く出来ているなと 驚きました。

教科書以外では、4年生向けと言われて習っていない漢字が出てくる本や、フリガナが降ってある本があり、漢字をふりがななく段階的に習得できるという意味で教科書は本当に素晴らしいと思います。 海外在住の子供が「この年齢でこの程度の日本語が読める」という判断基準にもなります。

毎年、きちんと装丁された教科書が無料配布されると所に税金が使われているわけで、こんなに毎年綺麗なものを出さなくても……という話はさておき、海外在住の子供にとって無料の教科書配布は貴重な存在です。受け取れるように確認されることをお勧めします。

日本人学校・日本語補習校に行く、行かない

海外で子供を育てていると出てくるのが「日本人学校に通うか」「現地校に通うか」「インターナショナルスクールに通うか」といった学校の選択です。これは大きな選択になりますので、その前に家庭の方針、先に書いた第一言語を何語で育てるかなどの方針を元に、親御さんや本人の判断が必要になります。

現地校、インターナショナルスクールを選択した場合は「日本語補習校に通うか通わないか」という選択肢も出てきます。

そもそも海外で日本人学校、日本語補習校の数は限られているので、住んでいる場所に寄っては通う事が出来ない場合もあります。通う事が出来る範囲であれば、行くか行かないか、とう判断が必要になります。

日本語補習校は土曜日に行われるので、遊びたい、習い事、現地校の勉強に集中、など年齢が上がるにつて徐々に生徒数も減っていくように感じます。この際も子供の言語力、やりたいこと、生活をどうするか判断しなければなりません。

バイリンガールで有名なちかさんは、アメリカ育ちで補習校に通われていたそうです。お泊り会の朝、親が迎えに来て自分だけ帰って補習校に行くという事もあったそうで、本人が嫌だと感じる事もあるでしょうし、親御さんも毎週学校に連れて行くというのは想像以上に大変で、また日本の学校独特のPTAなどの当番もありますし、親の方も通い続けるという意思が必要になります。

日本語教育 漢字の壁

日本語の書きの習得はとても難しく「ひらがな」「カタカナ」「漢字」その使い分けなど学ぶべきことが多くあります。海外で子供を育てていると、特に大きな壁に感じるのが漢字の習得です。私も、1年生漢字の説明ならできるかと思い子供に教えていたら、漢字の「はらい」がアルファベットには無く、子供に分かる説明が上手く出来ないという初歩的な所から始まりました。

そしてどんどん増えていく漢字の数。ドリルをやっても使う機会が少ない分、忘れる速度も速いです。日本の宿題が大変だと言われたり、宿題の無い国が良いように言われますが、日本語に必要な漢字を定着されるのに、毎日の宿題が有効なやり方なのだろうだと感じました。それくらい何度も書いたり、読んだりしないと定着しないのが漢字です。特に書きは大変で、海外に来てしばらく忙しく感じの勉強ができなかったとき、子供の各文字が象形文字のようになってしまいかなりショックをうけました……。漢字習得時期の海外生活では、忘れてしまう漢字と定着との闘いのような気がしています。

漢字は読めればよいと割り切っている家庭もあります。ここでも必要なのが家庭の方針です。苦労して漢字の書きを習得しても、そもそも使わないというライフスタイルの人も居るはずです。「なぜ日本語を勉強するの」という答え同様、海外の子供が漢字を習得するはかなり大変ですのでこの辺も、学習の方針を考えておいた方が良い所です。

海外在住子供の日本語教育で大切なのは各家庭の考え

海外在住の子供達とひとくくりに言っても、色々な立場の子供がいます。すぐに帰国する予定なのか、今後も日本に帰らないのかで大きく異なります。どちらにしろ海外で子供を育てて、日本語語を習得されるというのは想像以上に大変です。「習得」と考えるレベルにも差があります。 今後も日本に帰らない親の元で育っている場合は、 第一言語をどうするという事など日本語学習について家庭で方針や価値観を決め、それを貫く心の強さのようなものが必要になるなと感じます。

つらつらと海外在住子供の日本語教育について書きましたが、私自身もまだ子育て途中の身です。この考えが途中で変わることもあるかもしれません。とにかく一つ言えるのは、「海外在住子供の日本語教育」は想像以上に大変という点です。親の覚悟やサポートがないと、なかなか日本に住んでいる同等の日本語力の定着は難しいのでは、という点が現時点で思う所です。

ですが、そんな「大変だ」という私を横目に、補習校にいかない子供が日本語を習得していたりなどもあります。子供の個性や能力も違いますし、状況も違います。教育の答えは一つではないと思いますので、海外在位で子供の日本語教育を考える際は、ご自分の考えをしっかり持たれることをおすすめします。



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