コロナ休校中 オランダのオンライン授業

コロナの影響で休校となる中、オランダでは多くの学校でオンライン授業への移行が行われました。その経緯や授業の様子、準備しておくと便利なものなどを記録して書いています。海外の小学校のオンライン授業の様子

コロナウィルスの影響で休校が決定

日本では学校の休校が先に行われましたが、オランダでは3月12日休校より先にレストランや美術館などの閉鎖が政府から発表され行われました。子供より高齢者の方が危険と言われており、この時点では学校を休校する事はないという判断だったようです。

その後、3月15日に新型コロナウイルスの影響による休校の発表がありました。休校が発表されたのは日曜日。そして休校は翌日3月16日からという急なスタートです。日本でも休校が急だと言われていましたが、オランダの判断もかなり急でした。この時点で4月6日までの休校の発表がありました。(後に5月の休暇明けまでと、延長の発表票があります。)

日曜日夕方の会見だったので、家族内で困ったねなど話していると、その日のうちに学校や先生からメールで連絡がありました。休日は働かないというイメージのオランダ人だったので(失礼なイメージですね)、日曜日にメールが来たことにまず驚き、そして明日からオンラインで授業していきましょうね、という内容だったのでさらに驚きました。

学校が受け入れる職業の子供も明言

この発表もなるほどと良い意味で驚いたのですが、休校にはなるが、一定の職業の子供は受け入れるとの発表もありました。医療、警察、公共交通機関及び消防等に従事する親の子供達は親の勤務継続を可能とするため、学校及び託児所での受け入れを無料で手配するとの発表です。

この後、詳細な職業リストが発表され、スーパーマーケット、ごみ収集など色々な仕事が入っていました。そして学校から、このリスト内の職業で、学校が受け入れる必要がある場合は連絡するようにとのメールもありました。

オンライン授業の移行と内容

早速次の月曜日から、家での学習準備が始まりました。この速度にはとても驚きました。ただ、月曜から何らかの対応はあったものの、学校により対応は様々です。オンライン授業への移行と書きましたが、朝から昼までオンラインで授業している訳ではありません。学校により毎日オンラインで授業があるわけでもありません。

ICTの学校

ICTの学校ではさすがに対応が早く的確でした。教科書やワークブックを学校に取りに行くよう指示があり、その時点で1週間のスケジュール(カリキュラム)が配られました。

  • 7歳~9歳の子供が多く在籍するクラスの場合
  • オンラインの授業は1時間週2回、3~4名にグループ分け
  • オンライン授業は Microsoft Teamsを利用
  • それ以外はスケジュールに沿ってテキストを各自学習
  • オンラインの学習ツールもあり
  • 毎週勉強するスケジュールがメールで送られてくる

少人数でオンライン授業をしているので「先生は毎回同じ授業をしているのか」と思うと頭が下がります。低年齢のオンライン授業としては適格な人数なのか、比較的スムーズに授業を行えている印象です。

ゲームのようなオンラインの学習ツールも活用しながら、授業が進んでいます。このオンライン学習ツールも普段から使用しているものだそうで、自分でIDとパスワードを入力して進めていました。

オルナタティブ教育の学校

オランダにはモンテッソーリやダルトン、イエナプランなどオルタナティブ教育の学校が多くありますが、そのうちの1つでは、やはりICTの学校に比べるとアナログ感が強く残っています。

  • 9~12歳くらいの子が多く在籍するクラスの場合
  • 毎週 教材とスケジュールを届けてくれる(ボランティアの親が対応)
  • オンライン授業は毎日朝 クラス20名程度が参加
  • オンライン授業はGoogle Classroom を利用
  • 朝のオンライン授業で確認後 テキストに沿って各自学習
  • オンラインの学習ツールもあり

20名程度参加のオンライン授業でしたので、最初はカオスでした(笑)
徐々に子供たちも「ミュート」機能を覚えたり、先生もグループ分けして話す機能を使ったりと授業らしくなってきた気がします。オーストラリアに引っ越した子が参加したりと、オンラインならではの嬉しいサプライズもあったようです。

オランダ語を忘れないようにねと図書の貸し出しもしてくれました。図書館も閉まってしまっている今、ありがたい心遣いです。

ICTの学校に比べるとカリキュラムも少しアナログなのか、これは好きなぬいぐるみの絵を描くという学習。写真をスマホで撮影して先生に送りました。

4月からは毎週の学習スケジュール連絡も、なるべくオンライン移行していくと連絡がありました。状況も変わってきていますし、アナログ感は少し減っていくのかもしれません。ICTの学校に比べると最初からスムーズだったわけではなく、試行錯誤し徐々に変わりながらスムーズになってきたという印象ですが、毎日学校と先生から頂けるスケジュールがあるだけでもありがたい状況です。

自宅学習を進める際、難しいのがこのスケジュール立てです。オンライン教材など色々ツールが増えてきていますが、何をどのくらいどういうスケジュールで学習していけばよいのか、というのは親には分からない部分が多いです。

以前、中学講座 にチャレンジしたのですが、スケジュール立てが難しく挫折したという経験があります。スケジュールがあれば、その範囲を進めればよいので、自宅学習する際にとても助かります。

オランダの小学校でのオンライン授業の様子や、導入したツールについては以下に細かく掲載しました。オランダの様子が、小学生へオンライン授業の導入を検討しようとしている方の参考になれば幸いです。(オランダ全土の様子は分からないので、分かる範囲での様子になります。)

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失敗しながら進もう

どちらの学校を見ていても、試行錯誤を繰り返しながらではありますが、良い形を作ろうという感じがしました。20人程度が一斉にオンライン授業した最初の授業では、カオスすぎて笑ってしまいましたが、そんな失敗も経て、 子供たちも「ミュート」の機能を覚えたりしてオンラインツールにも慣れてきたのか、徐々に授業らしくなってきたようです。

3~4人での授業の方が授業としては適切なのかもしれませんが、決まったお友達にしか会えません。20人の授業の方は、授業というよりガイダンスのようで、毎日やることを先生から説明があります。人数が多いので若干のカオス感はありますが、先生が先に退室した後も、何人か残ってチャットしたりしていてなんだか楽しそうではありました。お友達に会える機会が少ない中、オンライン授業は友達と話せる貴重な時間でもあります。

さすがに通学している時のような授業の質が担保されているのか、というとそこまでではないとも思いますが、毎日カリキュラムがありそれに沿って学習するという環境を休校中にも関わらず用意してくれていることに、感謝の気持ちでいっぱいです。

イースタープレゼント

3月から急にオンライン授業が始まり、親の負担も増えました。学習スケジュールは学校が出してくれますが、時間割まではでていなかったので何時から勉強時間にするかなどの管理は親の仕事となりました。(一部、時間割まで出ている学校もあるようです。)

コロナの不安もあり、オンライン授業への対応で疲弊した中、学校からプレゼントがありました。ちょうどイースター休暇の前にお花のプレゼント。

ある学校では、先生からのメッセージもあり「大変な時期にも関わらず、いつも私たちがやっている業務をお願いしてごめんなさい。ありがとう」という事でした。 休校になってからオンライン授業の対応やコロナの不安でヘトヘトな中、そういって貰えるとなんだか嬉しい気持ちになりました。 普段学校がしていることの偉大さを感じています。 「親なんだから、子供の面倒を見て当然」なんていう言い方をする人も居てしまいそうですが、 誰もが大変な時だからこそ、気遣いは大切にしたいものですね。

休校中のオンライン授業移行で用意しておいた方が良いと思ったもの

コロナの影響で休校中にオンライン授業をやってきましたが、何個か準備しておくと便利なものがありました。

パソコン・タブレット

オンライン授業中は親がパソコンを使う事ができませんので、タブレットでも良いので子供がオンライン授業を受ける用の環境を用意しておくと、負担が減ります。

イヤホン付きマイク

イヤホンを好む子と好まない子も居るかもしれませんが、一応あると安心です。

プリンター

一部の学校では、家のプリンター環境の確認もありました。休校中は何かと印刷することが増えますのでプリンターがあると便利です。

用紙

意外と盲点だったのが用紙。用紙は腐るものではないので、もっと買いだめしておけばよかったと思いました。インクも同様によく使います。

学習補助教材

学校でスケジュールは出ていますが、朝から午後迄学習していた通学時と比べると学習量が少ない印象です。コロナの影響で無料体験などが出来るサービスも多いので、オンライン学習できる教材や動画サービスなどを、この機会に試しています。

日本でオンライン授業ができない理由

では同じように休校になったからオンライン授業へ、と切り替えが日本でもすぐできるか、というとそう簡単ではないと感じます。日本でオンライ授業が出来ないと考えられる理由を3つ記載します。(個人的な見解です。必ずしも、だからオンライン授業ができないという訳ではなく一個人の考えなことをご了承ください。)

習得主義と履修主義

オランダで、すぐオンライン授業に切り替えられたのは、日本と違う「習得主義」を取っていることも影響していると感じます。

日本の学校では、「履修主義」「学年主義」を採用しているので、学年で決められた学習を終えることで次の学年に進みます。「習得主義」を採用しているオランダでは、その学習を学び身に着けたことで次の学年に進むこととなります。そのため、オランダの小学校には落第もあります。

オンライン授業に切り替えても、要はその学習を身に着けていればよいので、日本より切り替えが容易な環境だったのだと思います。

クラス内でも同じことを学習しているわけではない

一斉授業が取られる日本では、先生が説明して各生徒同じところを同じように学習していますが、オランダでは(一部違う学校もあるかもしれませんが)、同じクラス内の同じ授業時間でもその子の学習レベルにより違う事を学習していることがあります。

例えば、算数の授業ワークブックをやるのですが、その子の学習レベルによりワークブックが異なります。ある学校では3つのレベルに分かれているそうで、先に進める子はどんどん先に進むという事でした。オランダには飛び級もありますので、クラス内でもできる子はどんどん進むのでしょうね。

元々そのような状況なので、各々の生徒に同じ授業をする必要はなかったという点は、日本と大きな違いといえそうです。

各小学校の裁量の幅

また、各小学校や先生の裁量の幅も違います。文部科学省の小学校学習指導要領で時間数が決められている日本と異なり、 オランダでは公立でも学校ごとに自由な裁量が認められていますので、各学校、急な対応を取りやすかったのだと思います。

一概に海外はオンライン授業に移行が出来ているのに、日本ではなぜオンライン授業ができないのかというのは、学校や先生方の問題ではなく、日本がそういった初等教育と決めているからという理由の方が大きいように感じます。とはいえ、日本では大前提が違うにしろ、子供の教育を受ける権利というのは存在します。 このような時期でも、オンライン授業の形など子供が教育を受けられる環境の整備を日本でも進めて欲しい、と強く感じます。

日本でもオンライン授業をしている学校もある

もちろん日本でも出来る限りの対応をしてくれている学校や自治体も存在します。 港区ではオンライン授業を導入しているという、記事を目にしました。素晴らしいと思います。

ノウハウがない、ネット環境の経緯など色々以降出来ない理由もあるようですが、オランダにもノウハウはありませんでしたし、ネット環境がなく授業を受けられない子も居ます。どんな失敗したオンライン授業でも、やらないよりはやった方が良いと、オランダでオンライン授業を受けている子供たちを見て思います。

もし、この記事を読んで頂いている方の学校がオンライン授業の導入をして、大失敗だったとしても、そのチャレンジは素晴らしい事なので、学校や先生の失敗を責めず、努力を称えて欲しいと思います。 周りがやっていないなか「オンライ授業をやろう」と決断しチャレンジした事は理由をつけてやらない事の何倍も大変だと思います。 失敗しても、先生やお友達の顔を見れるそれだけで、笑顔になれる子供も居るのです。失敗の様子をクラスで大笑いすることは、心の健康に良いかもしれません。そして、オンライン授業が順調そうに見えるオランダだって様々な問題があるのです。

オランダのオンライン授業移行で問題もある

オランダでも、完全にスムーズにオンライン授業が行われているという訳ではありません。休校が続くにつれ、色々な問題が出てきているようです。

連絡が取れない小学生が7000人

オランダのニュースサイトで4月7日に報じられたニュースです。学校は閉鎖されているため、子どもたちは自宅で教育を受ける必要がありますが、7000人の児童やその親と連絡が取れないという報道でした。(オランダ語のサイトです)

Door middel van huisbezoeken en rondes langs bekende hangple…

移民が多い国だから、コロナが怖くて母国に帰ったり、駐在の帰国命令などかなと思ったのですが、読み進めると「家庭内暴力と関係がある脆弱な状況にある子供たちに関係」とのこと。確かに学校への通学は、このような子たちの状況を察してあげたり助けになる場所でもあります。 今後数週間で、すべての自治体のこれらの問題のある家族を訪問する必要があると記事では書いていました。

デジタル・デバイト(情報格差)の問題も

オンライン授業への移行がスムーズだったと記載しましたが、同じクラスの子で1人、オンライン授業へ切り替わって1ヶ月間、1回しか参加していない子がいます。それがどういう理由なのかはわかりませんが「オンライン授業変わったから教育環境は問題ない」と考えられるのは恵まれた環境に居るからなのだと思います。オランダにもデジタル・デバイト(情報格差)の問題もあります。

記事内に子供たちが同時に宿題をしなければならない大家族は、そのために集中できないなどの問題も書かれていました。オンライン授業でゆっくりと静かな環境で授業を受けられるのは、子供にとって恵まれた家庭環境です。実際クラス中にも、赤ちゃんの泣き声が泣き止まないお家などもありました。安定したwifiがある環境もオンライン授業では欠かせませんが、wifiがない家庭もあるでしょう。

7000人というのは小学生だけの人数で、中学生は不明との事。オランダはオンライン授業に切り替えてて良いというような印象もあるかもしれませんが、こういった実態や問題点もでてきています。

今回の新型コロナウィルスの休校では、国ごとの教育環境の違いが出てきています。 休校中に何もしない子と学習する子の教育格差の話も出ますが、スムーズにオンライン授業に切り替わったオランダも、海外でも親のネットリテラシーや家庭環境などにより差が出てきています。また、不明など全く授業を受けていない子が出ており、教育格差も問題になっています。良さそうに見えるオンライン授業の切り替えですが、良い面だけではないということが、起こっているのもまた事実です。

ただ、問題があるにしろ、子供がこの局面でも「学ぶ機会」「社会との接触の機会」は大人として機会提供してあげたいものです。大人ですら心の健康がままらならないこのご時世で、子供の心の健康も支えてくれる機会もなるべく担保してあげたいな、と思ってやみません。

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