インテリジェント・ロックダウン【オランダのロックダウン】

海外の新型コロナウィルス対策政策「ロックダウン(都市封鎖)」のうち、オランダが取っているコロナ対策、インテリジェント・ロックダウンについて掲載しています。

欧州はロックダウン(都市封鎖)が主流

新型コロナウィルスの対策として欧州の多くの国はロックダウン(都市封鎖)をしています。イタリアをはじめ、スペイン、フランスなどでも同様です。

外出には許可が必要だったり、書類が必要だったり、外出することで罰金が取られたりする国もあります。銃を持った警察が見回りをしている国もあり、各国厳重なロックダウンの様子が連日ニュースとなっています。そんな中オランダは「集団免疫」を発表したり、オランダの政策やロックダウンは緩いと批判の声も上がっていました。

自主性を重んじるオランダのインテリジェント・ロックダウン

欧州各国の厳しいコロナ対策のロックダウンに対して、オランダのロックダウンは、外出しただけで罰金となったり、許可が必要などのロックダウンではありません。

オランダのルッテ首相は会見でこのロックダウンについて、「intelligent lockdown(インテリジェント・ロックダウン)」という言葉使いました。オランダは一定のルールは設けるが、完全なロックダウンはしないという方法をとっており、このロックダウンを「インテリジェント・ロックダウン」と呼んでいます。自主性を重んじるから、国民は個々の判断でコロナウィルス対策のロックダウンをしようという意味にとれました。国民のインテリジェンスを信頼したロックダウンです。

オランダのロックダウン政策では、そのルール内であれば多少は外出でき、人々は完全に家に閉じ込められたわけではないので、その人その人の判断で、最低限の外出をし、散歩やマラソンなどでストレス発散をしながら、ロックダウンに近い状況を過ごしています。

もちろんスキポール空港もガラガラです。

インテリジェントロックダウンと日本の「外出自粛」を比較

自主性を重んじるインテリジェント・ロックダウンなので、日本の外出自粛と似ているかもしれません。大きく違うのはオランダ全土での営業停止や外出時の人数などコロナ対策の厳密なルールは設けられているという点です。

政府は学校、レストラン、美術館や博物館など施設閉鎖は明言しており、国内で営業が停止されています。学校の授業継続は各々の学校が行っていますが、オンラインでの授業を継続している学校が多いようです。レストランも完全閉店しているところもありますが、テイクアウト(持ち帰り)は禁止されていないので、宅配や、持ち帰り専用として営業を継続しているところもあります。レストランの営業を停止する中、最低限でも経済を回そうという気持ちも感じられます。

スーパーマーケットのレジでは1.5mの距離が取れるようマークがあります

オランダのロックダウンも政府は「ソーシャルディスタンス」と日本でも言われているように人との距離を取ろうと宣言していますが、明確に「1.5mの距離」と数字をだしています。また美術館や博物館、レストランを閉鎖し、 あらゆる場所において、人が集まることを禁止としながらも「外出する際、近所や道路の往来においても、3名以上が固まって行動することを禁じる」と人数の制限を出し、「買い物は1人で」と指針を示し、「自宅に家族以外の者を呼ぶ際は、最大3名までに制限」と家に人を呼ぶことに対して人数まで指定をしています。 インテリジェントロックダウンでは、個々人の判断での外出許容しているのです。

外出自粛と大きな違いだと感じるのは、明確に「その数以上は駄目、この距離以上は駄目」というルールを設けたうえで、そのルール中でなるべく外出しないように、各々が判断することを求められている点です。逆に言えば、その程度なら大丈夫という、心のゆとりにもつながっている気がします。

もちろんルールに反した場合は罰金が用意されています。事業主に対しては最大4000ユーロ、個人に対しては最大400ユーロの罰金が科されるとされました。

このように、オランダでは一定のルールを設けたうえで、完全なロックダウンをせず、各々の自主性を重んじた「intelligent lockdown(インテリジェント・ロックダウン)」を実施しています。

オランダのロックダウンはマリファナ政策と同じ?

そこにはマリファナを違法としながらも一定量ルールを持って許容しているオランダらしい政策を垣間見ました。要は、マリファナはオランダでも違法ではありますが、禁止してもどうせ隠れて吸うだろうという事なのか、決められた場所で決められた量であれば許可しているという事なのです。 今回のロックダウンも、外出を完全に禁止しても「どうせ外出する」のだから一定のルール下では外出を許容するというようにも見え、オランダらしい政策だなと個人的に歯感じました。

先日足を運んだ湖

私も今は、基本的に家に居る生活をしていますが、ロックダウンの疲れもあるのか家の中に閉じこもることに少しストレスを感じ、先日湖に足を運びました。外にはほとんど人がおりません。少しの時間でしたが、とてもスッキリした気持ちになれ、ロックダウン中でも自由に自分の判断でこの時間が取れることを許容してくれた、インテリジェント・ロックダウンというコロナ対策に感謝しました。

守っていない人も居る

インテリジェント・ロックダウンは罰金あるとはいえ、自主性を重んじています。そのため、守っていない人も見かけます。オランダでは良い天気が続き、散歩へ海などへ行く人が増え道が閉鎖されるなどもありました。

また、コロナの影響で施設閉鎖などが行われた時期は、オランダのチューリップの見頃の季節とも重なっています。ちょうど3月末から5月はオランダの人気観光地、キューケンホフ公園がオープンする季節なのです。(2020年は閉園が決定)

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キューケンホフ公園の周辺地域は、チューリップ畑がある場所も多く観光地になっています。満開のチューリップ畑をみようと人が集まり、市長が怒るなどというニュースもありました。

日本でも自粛を呼び掛けているのに外出している人がメディアで取り上げられていますが、オランダの「インテリジェント・ロックダウン」も強制力が弱いだけに、政府が定めていない場所でも閉鎖が行われたり、どこがインテリジェントなの?しっかりしようよ、という声が聞かれてしまっています。

ロックダウンによるDVや虐待の防止

ヨーロッパ諸国では、政府による完全封鎖をしており、一定の効果が出ているものの、外出禁止による「コロナ疲れ」のストレスが深刻で、DVや虐待などの問題が出てきています。

その点では、オランダの各自の自主性に任せている「インテリジェント・ロックダウン」政策も一理ありという印象はあります。政府から「外出するな」「外出したら罰金を取るぞ」と言われるより、「外出はなるべく避けて」「国民の判断を信じる」と言われた方が心理的な負担は少ないです。コロナウィルスの不安や、自宅待機は、ただでさえストレスの多い状況ですから、心理的負担を少しでも減らすことは、DVや虐待の軽減につながる可能性は高いです。

まだ正解のないコロナウィルス対策

これを書いている2020年4月5日時点(その後少し追記)では、完全ロックダウンが良い政策なのか、オランダのインテリジェントロックダウンが良い政策なのか、ロックダウンすらしない国がよいのか正解は分かりません。オランダの感染者推移は以下に掲載しています。

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5月11日からロックダウン緩和

4月21日に再度の首相会見があり、イベントの中止やレストラン美術館などの施設閉鎖が8月31日まで延長されることが発表されました。そんな中、5月11日から小学校などを再開するという発表がありました。同時に通学する生徒数を、普段の半分にするなどの対策をした上でという事ですが、事実上のロックダウン緩和といえます。まだまだ感染者数増加も死亡者数増加も3桁のオランダです。

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どの国も方針を持ち、コロナウィルスから国を守るために必死な状況です。オランダのロックダウンの方法「インテリジェントロックダウン」の現状を日本語で伝えることで、こんなロックダウンをしている国もあるという事が伝われば幸いです。新型コロナウィルスの中で、生き残れることを祈って。

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